4つの森の州の湖を上から臨む絶景ポイント

スイスは『ヨーロッパの水の城』という異名で呼ばれることがあります。
美しい河川や湖は湧き水と氷河や山の雪解け水で満たされ、質の良い地下水にも恵まれた、水がとても豊かな土地なんです。

スイスの典型的な風景として挙げられる写真の数々には、アルプスの山々ばかりでなく美しい川や湖が含まれているものが多いのも、そんな背景から来るのかもしれません。

そんな自然豊かなスイスの湖の中で、私が最も美しい湖だと思うのはフィアヴァルトシュテッテ湖 / Vierwaldstätterseeです。日本語では『4つの森の州の湖』と訳されるのですが、その名の通り自然豊かな4つの州(Uri, Schwyz, Unterwalden, Luzern)に周囲を囲まれていることから付けられた名前です。(現在はそのうちの1つの州Unterwaldenが2つに分かれたために、5つの州に囲まれている。)

『4つの森の州の湖』って、物語り性を秘めたとても素敵な名前だとは思いませんか?

16世紀まではルツェルン湖 / Luzernseeと呼ばれていた歴史があり、未だにその名前は残ってはいるものの、スイス人は愛着を持ってこのフィアヴァルトシュテッテーゼーという長い名前で湖を呼びます。実際にこちらが正式名称であって、ドイツ語の地図にもVierwaldstätterseeとあるのだけれど、その非常に覚えにくい長い名前はドイツ語がわからない外国人にとっては曲者で、英語表記や日本語表記がLake Lucernやルツェルン湖となるのも納得してしまいます。
個人的には密かに、普通にこの名前を言える自分を誇りに思うし、この名前をつけた人センスあるなあって思っているんですけどね(笑)

 

日本人の感覚からするととても大きな湖なので、なんとなくスイスで一番大きな湖なのかと思ったら、実は四番目に大きな湖だそう。
ジュネーブ湖、ニューシャテル湖、ボーデン湖の次にフィアヴァルトシュテッテ湖と続くのだけれど、ジュネーブ湖はフランスとの国境に位置し、ボーデン湖はドイツとオーストリアに接しているので、どちらもスイスだけが所有する湖ではない。そしてニューシャテル湖はフランス語圏なので、ドイツ語県の住民には少し隔たりがある、だからなんとなくドイツ語圏で一番大きな湖フィアヴァルトシュテッテ湖がスイスで一番大きな湖という認識に、私の中ではなっていたのかもしれません。

 

 

この湖は山々の間の谷を埋めるように水が溜まってできた湖なので、細い枝が四方八方に広がるようなとても複雑な形をしているのが特徴です。湖畔の周距離は143.7kmもあるんです。
そのため湖畔に面した街はたくさんあるのですが、その中でもフィアヴァルトシュテッテ湖が最も美しく見えるのは、高い山々に囲まれたウーリ/Uri州の地域ではないかと思っています。

この辺りは、アルプスの北側から南側に抜ける高速道路が走っているので、スイスのイタリア語圏やイタリアへ車で遊びに行くときにはよく通り抜けるエリアなのですが、車窓から見える景色の美しさにいつも心が高揚するエリアです。
高速道路が走っている湖面付近から山々を見上げても感動の美しさですが、それを山の上から見下ろすと視界が大きく開けて、水面とはまた違った広大な大自然の美しさを望むことができます。

ゼーリスベルク/Seelisbergフィアヴァルトシュテッテ湖の美しさを山の上から一望できる絶景ポイントです。人里離れた山岳地帯ではなく車で直接行ける所なので、体力に自信のない人もふらっと行ける展望スポットでありつつ、スポーツ好きは湖を眼下に山歩きも楽しめる、週末の日帰り旅行にもぴったりな場所。

観光地化はそれほどされていないので、レストランや宿泊施設は少ないですが、人混みにストレスを感じるようなところではないので、のんびり滞在を楽しめるのが嬉しいです。

MERU SEELISBERというちょっと不思議な宿泊施設の前の公園かSchiller-Balkonが絶景を拝めるポイント。無料で1時間車が止められるパーキングエリアが付近に何箇所かあるので便利です。

 

 

左上の写真中央に写っている緑の芝の丘は、スイスが始まった場所なんです。
リュトリの丘/Rütliwieseと呼ばれるその場所は、1291年にウーリ、シュヴィーツ、ウンターヴァルデンの3州がハプスブルク家から独立し建国を誓ったとされる、スイスの歴史を語る上で重要な場所。

毎年8月1日の建国記念日には祭典が行われるので、その際には愛国心の強いスイスの人々が多く訪れる土地なのですが、この区域は自然保護区域で建物の建設が禁止されているため、小さなレストランが一件ある以外は観光案内所も土産物屋もない、海外からの観光客を迎え入れる体制のない所でもあります。

船で近くの湖畔に着く事はできるのですが、この日はCovid-19の影響で船がまだ運行されおらす、リュトリの丘までのルートはゼーリスベルク/Seelisbergから山道を下っていくのみになっていました。降り始めは緑の美しい森の中を悠々と降りていったのですが、降りても降りても丘が近くならない。
なんでも高低差にして350mほどを降らなければいけないのですって。降るだけならなんとかなりそうだったのですが、ここを登って車が止めてあるゼーリスベルクに戻るのは厳しいなあと思い、軟弱な私たちは3分の一くらいを下ったところで諦めて上に戻りました(笑)
だって下に降りても、この日はCovid-19の影響でレストランも休館中だったんですもの。

この山道を降りながら見える湖の景色も相当に美しくかったので、それを見れただけでも良かったんじゃないかと思いましたが。

 

 

ゼーリスベルクに戻った私たちは、ホテルのレストランで遅いランチをとることにしました。
Hotel Bellevue Seelisbergという4つ星ホテルのパノラマレストランで食事を取ったんですが、ここからの景色は湖のパノラマがそのまま見渡せるので、のんびり食事をするには最高のロケーションです。

窓の外にはトンビが弧を描いて美しく舞うのが見える。
アカトビというトビ科の鳥でドイツ語ではMilanといいますが、赤い羽が美しい結構大きな鳥です。

 

ところでここのお料理がとても美味しかったんですよ。

私はスイスの典型的な郷土料理が大好きなんです。
写真は淡水魚のフライで、魚好きな私がよくこちらの郷土料理のレストランで注文するお料理です。ビールが入ったサクサクの衣に包まれた白身魚のフライを、タルタルソースにつけて食べるのですが、もちろんこの白身魚はフィアヴァルトシュテッテ湖で採れたものです。

スイスジャーマンでEgliknusperli/エグリクノスペリと呼ばれるこのお料理。フライに使われるエグリ/Egliという淡水魚は、ヨーロピアン・パーチと日本語に訳される魚なんですって。スイスに限らずヨーロッパに生息している淡水魚で、海に面していないスイスでも湖などで採れたものが簡単に手に入る、こちらでは一般的な白身魚です。

このお料理はどこで食べても美味しいことが多いのですが、ここのレストランでは付け合わせの温野菜がとても美味しかったんですよね。厳密に言ったら、蒸し野菜にかかっていたオランデーズソースが唸るような美味しさでして。ソースがアルデンテに蒸された野菜の素の味を良い感じに引き立てていました。
いつもは野菜やジャガイモが完食できずに残すことが多い私が、ペロリと食べ終えました(笑)

エグリクノスペリはスイスの湖沿いにあるレストランでは必ず用意しているメニューで、スイスではありきたりな料理ではあるんですが、久々にこのお料理でこんなに満足しましたね。

ウエイトレスのお姉さんに、温野菜にかかってたオランデーズソースがめちゃくちゃ美味しかったって、いつもは完食できないのにあまりにおいしくて全部食べちゃったって伝えたら、もともとフレンドリーだったお姉さんが満面の笑みで喜んでくださいまして、食べて幸せ、お礼言って幸せ、そして私の幸せな気持ちがお姉さんにも伝染したと感じてさらに幸せな、大、大、大満足のゼーリスベルクでのランチでした。

 

日本ではそんな風に、ウエイトレスさんと会話することが少ないかもしれませんが、私は美味しかった時には積極的にお店の人に気持ちをお伝えすることにしています。
これはスイスで生活する中でいつの間にか身に付いた生き方かもしれません。

スイスにいる時に限らず日本に帰ってもこの調子なので、日本の友人には恥ずかしいと言われたことがありますが(笑)そういうコミュニケーションを受け取ってくれなさそうな雰囲気のところでは、空気を読んで控えてはいるつもりです。

心から美味しさやサービスに感動した時だけの話なんですが、言葉に心がしっかりと乗っていると、どんな場所でもどんな所でも、世界中のあらゆる場所で幸せを人々に伝染できると私は経験を通して実感している。

どこでもこのスタンスを貫ける自分を、私は密かに自分で気に入っているんです(笑)

 

 

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