退屈かもしれないスイスの素朴な景色

あえて観光客にはオススメしないけれど、ここはスイスで一番大きな島、Ufnau(ウフナウ)というところ。

チューリッヒ湖に浮かぶ、わずか11ヘクタールほどの小さな島で、30分もあれば余裕で一周できてしまうほどの小ささなのですが、小さな国スイスでは一番大きな島なのです。

何か特別なものがあるわけではありません。

だから、あえて観光客にはオススメしない。

でも、そんな所だからこそ行って見たいと思う、素朴な田舎の景色が好きな人には、ぼーっと安らかな気持ちになるような所かもしれません。

 

チューリッヒ湖に面した街、Rapperswil(ラッパースウィル)から船に乗って、10分ちょっと。チューリッヒ市内から船に乗ると1時間45分ほど。時間のある人は湖上からチューリッヒの町並みを眺めつつ、市内からのんびり船で行くのも良いでしょう。

しかし大抵の乗船客は、古い町並みや城址などが綺麗なラッパースウィルを目指してくるので、この島で船を降りる人は決して多くはありません。

 

島にはレストランが1件あって、焼きソーセージや、白身魚のフライなどが美味しく食べられます。

白身魚のフライに使われるバス(淡水魚)はもちろんチューリッヒ湖で獲れたものだから、ここまでわざわざ来た人はせっかくだから食べて行ってもいいんじゃないでしょうか。搾ったレモン汁をかけて、タルタルソースにつけていただく揚げたてのフライは、とっても美味しいです。

白身魚のフライはスイスの名物料理なので、食べられるところは他にもたくさんあるのですがね。

 

 

島はアインシーデル修道院Kloster Einsiedeln)の所有になっていて、葡萄畑には修道院のワインのためのものだと書いてありました。

小さなチャペル(Kapelle St.Martin)と教会(Pfarrkirche St. Peter und Paul)がひっそりと建っていて、この島で結婚式やパーティーを開いたりも出来るんだそうな。最近修復されて真新しい家具が置かれ、新しい扉が付いていたりして、建物自体は昔のままのを残しつつも小ぎれいに使いやすくなっていました。

 

装飾はほとんどない質素な教会とチャペルなのですが、上を見上げると相当歴史を感じさせるフラスコ画が描かれていて、チャペルは7世紀ごろ、教会は10世紀ごろに建設されたという、気の遠くなるような年月に思わずため息が。

きっと、今もそんなにこの島は変わっていないのではないのかな?

湖の向こうに見える景色は、大きく変わってしまっても…

 

 

それなりにレストランにお客さんは入っているようですが、一歩レストランを離れるととっても静かです。

いくつか小さな建物が建つだけで、あとは葡萄畑と牧草地が広がっているだけ。

なんだか言葉で表現するのは必要ないような、ただただ、ぼーっと眺めていたい景色だけが広がっている。

 

 

ところで少し話は変わるのですが、電車や船に乗るのにも、スイスには改札というものがありません。

もちろんチケットは買わなくてはいけないのですが、チケットコントロールの人がくる時もあれば、来ない事もよくある。この日も船の中でチェックを受けることはありませんでした。

みんなチケットを買うのは当然だと思っているし、電車や船を運行する側も、皆が料金を払ってくれていると信じている。なんだかこの関係が成り立つ社会って、いいなと思います。

何度か無賃乗車で捕まる人を見かけた事もあります。だから、不正がないわけではないのでしょうが。

でもこの大雑把さをずっと貫いていける事が、改札を通らないと電車や船に乗れないところで育った私には、なんだかキラキラして映るのでした。

 

 

湖の向こうはラッパースウィル。こちらのレポートはまたいつか。