建築巡礼 / テルメヴァルス / 7132HOTEL

テルメヴァルス(Thermevals)はスイスのグラウブンデン州にあるスパ施設です。プリツカー賞受賞建築家であるペーター・ツムトー(Peter Zumthor)が約10年の年月をかけて設計したことで知られる神聖なスパ施設で、スパのオープン以来、建築愛好家の巡礼の地としてよく知られています。

ヴァルスの村に温泉の泉が見つかったのは17世紀に遡るのだと言います。19世紀からは治癒効果の高い温泉水が湧き出るということで医師が患者に勧めるようになり、ヨーロッパ中からこの温泉を求めて人が訪れるようになったのだとか。

元サナトリウムであった建物をホテルとして開発したのがホテル・テルメヴァルス(Hotel Thermevals)。1996年にはホテルに併設してスパ施設がオープンし、新たな歴史をスタートさせました。

 

画像提供/7132.com

 

ホテル・テルメヴァルスは2012年に地元出身の投資家に買収され、現在は7132 HOTELという名前で運営をしています。
エントランス部分のみmorphosis(Thom Mayneトム・メイン率いる建築設計事務所)のデザインによりモダンに変身しましたが、それ以外の宿泊施設の外観はサナトリウム時代の原型を残したままになっています。

ホテルのミステリアスな名前、7132はヴァルス村の郵便番号でもあるのですが、お洒落感とインパクトが加わってデザインホテルの風格が備わった感があります。ネームチェンジと同時にホテルの大幅なイメージチェンジも行われ、『静かな療養地』というイメージから一気に5スターホテルへと変貌を遂げました。

昔からのファンには不評の声が高いのだと言いますが、ホテルのサービスやクオリティーは優秀で、ハウス オブ アーキテクツ(House Of Architects)ではペーター・ツムトー(Peter Zumthor)デザインの客室ばかりでなく、安藤忠雄、隈研吾、トム・メイン(Thom Mayne)デザインの客室が新たに加わったことは、建築愛好家にとっては嬉しい変貌です。
宿泊費(スパの入場料を含む)やスパの一日入場料もホテルのランクアップに伴い値上がりしましたが、それでも尚、癒しを求めて休暇を過ごすことを求めてしまう魅力が、やはりあると私は思うのです。

 

ちなみにハウス オブ アーキテクツ(House Of Architects)に関しては4スターホテルとなっています。Booking.com経由で宿泊の手配をされる方は入り口が違いますのでご注意を。朝食ビュフェの価格も異なるので、本館部分(エントランスと同じ建物)にある7132HOTELエリアとハウスオブアーキテクツでは宿泊客の接待が若干変わるようです。ホテルのホームページから宿泊の手配をされる場合は『7132Hotel』『HouseOfArchitects』『Glenner』(←ヴァルス村のセントラルにある伝統的な建物で7132Hotelからはかなり離れたところにあります)からカテゴリーを選ぶ形になります。5スターエリアのお部屋はゴージャスなスイートルームを含む快適で広々とした作りになっており、ハウスオブアーキテクツエリアの建築家のアイデアが詰まった小さな箱という趣きの宿泊室とは全く違うタイプの客室です。

 

画像提供/7132.com

 

その大きな理由はやはり、ペーター・ツムトー設計のスパ施設にあるんですよね。

好みもあるかもしれませんが、あれほど神秘的な静寂を感じられるスパ施設は他にないと私は思うんです。あの青いグラニット(地元で採掘された花崗岩)に囲まれた水の中に体を委ねて浮かんでいると、宇宙空間にでも浮かんでいるような不思議な感覚に陥るんです。

スパはホテルには宿泊せずに日帰りでも行けるのですが、私が住んでいるチューリッヒ からは2時間ほど車を走らせなくてはならないし、せっかくだから2日間贅沢にスパを堪能したい。(宿泊料金にはチェックイン日とチェックアウト日のスパ入場料が含まれます)
それに有名建築家がデザインした部屋に宿泊するのも、楽しいアトラクションの一つなのです。

ちなみにスパは静かに過ごすための大人の空間と理解して良いと思います。決して家族向けではありませんので、小さなお子様がいる方は子供を預けて訪れるのが良いと思います。

 

画像提供/7132.com

 

少々残念に思うのは、ホテルを買収した投資家がヴァルス村に昔からあった小さなホテルやレストラン、商店なども含めて買収してしまって、村の全てが7132HOTELの支配下にあるような構成になってしまったことです。
個人的にはテルメ周辺は7132HOTELスタイルでモダンに開発するので良いですが、元々あった地元の素朴なレストランなどはそのままであって欲しかった。…というのはお気に入りだったレストランが、安っぽいカジュアルなレストランに変わってしまって、ヴァルス村を訪れる楽しみが一つ減ってしまったことに他ならないのです..。

 

ホテル内のレストランは、それはそれは美味しいお料理を提供してくださる素晴らしいレストランであることに他ならないのですが、星がいくつもつくような高級レストランなので、そんな食事をする気分ではないこともある。ラフなスタイルでお腹いっぱい郷土料理を頬張りたい時もあるのです。
ちなみにホテルが運営するピッツェリアも近くにあるのですが、イタリアンではなくて郷土料理がいい(笑)

 

でもそんなことを思ってしまうのは、昔から何度もここを訪れているからこそなのでしょう。
初めてヴァルスを訪れるゲストの方は、昔と今を比べる必要などなくモダンに洗礼された現在の建築を楽しむだけで満足なはずです。

私だってそんな風に愚痴をこぼしつつもまた行きたくなるに決まっている、それだけ魅力的な場所であることに間違いはありません。

 

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House Of Architectsの建築家がデザインしたお部屋については、別記事で改めてシェアします。

ホテルへのアクセスは電車やバスでも可能ではありますが、本数が限られるので車が便利です。

 

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