水について考えてみる

水って私たちの生活にありふれた物質だと思うんです。朝起きてから寝るまでの間にいったい自分は何度、水道の蛇口をひねるんだろうか?いったい何度、水が必要な場面に出くわすのだろうかと考えてみると、私たちの清潔で豊かな暮らしがどれだけ水に支えられているのかということを実感できると思います。

日本人って一日平均300リットルもの水を使うんですって。

これは飲み水だけではなくて、トイレやシャワー、料理や洗濯なども含めた1日に使う全ての生活水のことですが、300リットルってなかなかすごい量ですよね。ちなみに一般家庭用の浴槽に水をなみなみ溜めると200〜250リットルくらいになるそうです。平均の300リットルは一人当たりの水の量を家族の数で割って計算しているのでしょうが、それでも自分1人に浴槽一杯以上の水が毎日必要なのだと考えてみると、衝撃を受ける方もおられるかもしれません。しかも300リットルはあくまで1日に使う水の量であって、死ぬまで毎日300リットルの水のお世話になるのだとしたら、もうどのくらいの量になるのか想像もできませんよね(笑)

だからって水を節約しようという提案をしたいのではないのです。どれだけ水という物質が私たちの命を支えてくれているのかということを、思い出して欲しかったのです。当たり前に周囲の空間を埋める空気のように、なくては生きていけない物質なのだということを。

 

なぜそんなことを思ったのかと言いますと、きっかけはこのコロナ騒動です。

世界的に外出自粛が義務付けられて、人も車も街から消え、工場がストップし、飛行機もあまり飛ばなくなって、私たちの生活は大きく抑制されたわけだけれど、環境問題は地球規模で大きく改善されたではないですか。大きな都市の上空に停滞していた大気汚染層が解消されたり、海や湖の水がきれいになったという話は耳に新しいですよね。

確かに、よかったなーと心から思うニュースではあったんですが、例えばベネチアの運河の水が透明度を増して魚が泳いでいるのが見えるようになったと聞いても、ベネチアには特に縁もゆかりもない私にとってはどこか他人事でしかなかったんですよ。

それがですね、長らく閉鎖されていたチューリッヒ湖沿いのプロムナードが数週間前に解放されまして、早速以前のように散歩に行ってみたところ、この目で湖の水質の変化を確認してしまいまして。それですっかり他人事ではなくなりました。

チューリッヒ湖の水の透明度はもともと都市とは思えないほど高くて、汚染されているという印象はみじんもなかったわけなのですが、数ヶ月にわたってプロムナードや公園の人が消え、船の運行がストップし、プライベートなボートの使用に規制がかかっていた間に、しっかり自然浄化されていたんですね。

 

「鴨の赤ちゃんかわいいなあ…」なんて思って湖を上から眺めてみたら、1〜2mくらいの水深の湖底にたたずむ砂利の一つ一つまでがはっきり見えるではないですか!

もともとチューリッヒ湖の水はきれいだからこれ以上きれいになることもないと思っていたのだけれど、驚くほど水の透明度が高くなっているのを目撃して、大きく衝撃を受けたわけなんです。

船やボートの行き交いがどのくらい水質汚染に影響を与えるのか私には詳しく分かりませんが、湖沿で飲み食いをする人々が居なくなり、ヘアスタイリング剤やサンクリームを塗りたくった人々が泳がないだけでも、実際には随分違うものなのかもしれません。

いくら都心にある湖だからと言っても自然は自然。数時間山道を歩かないとたどり着けないような秘境にある湖と、本質はなんら変わらないのだと思います。
都会の中の自然に対しても同じように敬意を払って、穢(ケガ)さない心構えが必要なんですよね。

あまり神経質になりすぎたくはないけれど、湖の水に触れる時にはちょっと立ち止まって確認したいし、日頃から環境に優しい洗剤やケア用品などを使う生活を大切にしたいと思いました。
たまたま私は地元のチューリッヒ湖から気づきを得ましたが、その心構えはもちろん世界中の自然に対してという意味です。

 

 

ところでこのチューリッヒ湖の水は、チューリッヒ市民の水道水の70%以上を占める大切な資源なんです。

スイス全体の水道水は『源泉』もしくは『地下水』からの供給が80%を占めるのですが、チューリッヒ市内で供給される水道水に限っては、チューリッヒ湖の水が70%、源泉から15%、地下水が15%となっているので、ヨーロッパにあって稀に質の良い軟水が供給されているのです。

ヨーロッパは石灰質の硬い岩盤に覆われた地域が多いですから、地下水はその硬い岩盤を通過する際にミネラル分を多く吸収し、硬度がとても高いのです。
スイスの多くの地域で供給されている水道水は地下水の割合が高いので、お湯を沸かすと鍋に石灰質の白い線がくっきりついてしまうほど。でもチューリッヒの水道水でお湯を沸かしても白い線は全くつきません。
日本の水道水に比べたら硬度は多少高いのですが、お茶を入れても、料理に使ってもほとんど問題を感じることがないし、水回りの掃除もそれほど苦になりません。

しかもチューリッヒ市の浄水場は塩素を使わない特殊な浄水システムを採用していて、日本の多くの地域で供給される水道水のようにカルキ臭を感じることがないのです。水中でウイルスやカビなどが発生しないよう、水質を保つために塩素を使用することは多くの国で採用されているのですが、不快な匂いや健康・環境への悪影響が懸念されるところでもあります。

チューリッヒでは砂やプランクトンなどの自然のバイオメカニズムを利用した、特殊なフィルターで浄水するシステムを採用しており、世界的に極めて稀に科学的な成分を一切使わずに浄水することに成功しています。市でもチューリッヒの水道水を飲み水として推奨しています。

4つの森の州の湖を上から臨む絶景ポイント』という記事の中でも少し触れましたが、スイスは水に恵まれた豊かな土地で、その4割は水道水として浄化する必要がないほどの水質なんだそうです。もともと水質が良いからこそ、自然の力を利用した浄水システムが可能なのかもしれません。

そんな水が豊かな国にご縁あって暮らしていることや、そんな水を毎日蛇口をひねるだけで使わせていただけるなんて、とても幸せなことですよね。

 

ここまで綴ってきたことは私の個人的な気づきなのですが、特にコロナ騒動で周囲の自然環境の変化を感じることがなかった方々も、決して他人事だとは思って欲しくないんですよ。だって水が必要なのは人類共通ですもの。

始めにも触れましたが、水を節約しようという提案ではなく、私は使う水の量を減らすことよりも、再生可能な水の使い方をしたいと考えています。
もちろん水不足が懸念される時に節約することは必要だと思うのだけれど、水というのは流動させずに溜めておくと腐って使えなくなってしまうもの。経済と同じように回すことが必要なんだと私は考えています。

だから環境に優しい洗剤を選択することであったり、オイルなど浄水が難しいものを流さない心構えであったり、そんな小さな取り組みがやがて大きな流れにつながっていくのだと思っています。

『サスティナビリティ ーな買い物を』という記事の中でも触れましたが、環境に優しく、経済が潤って、自分もハッピーになるという、皆がWINのサイクルをつなげていく流れを推奨したいと思っています。

 

湖の水の水質の変化を目撃したことをきっかけに、日常でいつもお世話になっている水道水についてまで思考が及んで、水に対する意識が他人事からすっかり自分事へと変化した、というお話でした。
皆さんも日頃使っている水はいったいどこから来るんだろう?なんて疑問を持って調べてみると、今までには感じたことのなかった視点が広がるかもしれませんよ。

 

長くなりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました!

 

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